内縁のパートナーに遺産を残すためには!?パートナーに遺産を残す方法と注意点を解説

相続

おはようございます。

東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。

自分に万が一のことがあったとき、長年連れ添ってきた内縁のパートナーに財産を譲りたいと考えている方もいらっしゃると思います。

内縁関係として連れ添っている場合は相続人となることができるのか!?

今回は内縁関係のパートナーのために遺産を残す方法とその注意点について解説していきます。

少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。

内縁とは

内縁とは、婚姻届を市区町村の役所に提出してはいないものの、それ以外は法律上の婚姻関係にある夫婦と変わらない暮らしをしている関係を指します。

単なる同棲や同居と異なり、当人同士に婚姻する「意思」があり、共同生活の「実態」がある状態をいいます。

内縁と事実婚の違いは?

「事実婚」という言葉もありますが、実態としては事実婚も内縁も違いはありません。

事実上婚姻関係にある内縁は、婚姻に準ずる関係として、社会保障制度上、法律婚(婚姻届けを提出し、法的手続きをおこなっている婚姻)の夫婦と同様に扱われます。

内縁関係のパートナーの相続

法律上の婚姻関係にある夫婦と変わらないとされているものの、相続についてはどうか確認します。

内縁関係のパートナーは法定相続人にはならない

事実上、法律婚と同様の内縁関係ですが、相続に関しては違いがあります。

民法によって被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に相続人となると定められています。

一方で内縁関係にあったパートナーは、法律上の相続人には含まれていません。

民法上の配偶者は婚姻届を提出したパートナーを指しています。

内縁関係のパートナーは長年連れ添った事実があったとしても、法律上の配偶者としては認められず、法定相続人にはなりません。

遺産を財産を相続する権利を持っておりません。

  →→法定相続の解説についてはこちら

内縁関係のパートナーは寄与分や特別寄与料が認められない

寄与分とは、相続人の中で被相続人(亡くなった方)の事業を手伝ったり、被相続人の療養看護に努めるなどにより、財産の維持または増加に貢献した場合に、相続分を修正して貢献した相続人が取得する財産の額を増やし相続人間の公平を図る制度です。(民法904条の2)

近年では、親の介護のために仕事を辞めざるを得なかったなど、介護をした人が寄与分を主張するケースも増えています。

しかしながら、この寄与分が主張できるのは法定相続人に限られており、相続人ではない内縁のパートナーは寄与分を相続することはできません。

また、2019年7月に相続法が改正され、特別寄与料という制度が新設されました。

この制度は、寄与分の制度で報われない人(例えば長男の嫁が義理の父親を介護したなど)を救済するための制度です。

特別寄与料は、寄与を主張できる人の範囲が拡大されたものの、その対象は被相続人の親族までなので、親族でない内縁のパートナーは対象となっていません。

どんなに長年連れ添っていても、事業を支え、介護などの労務を無償で提供をしていたとしても、内縁のパートナーは寄与分や特別寄与料を受け取ることはできないとされています。

  →→寄与分の解説についてはこちら

  →→特別寄与料の解説についてはこちら

内縁関係との子供の相続

子を認知していれば相続権がある

内縁のパートナーとの間に子がいた場合、その子が認知されていれば相続権が認められます。

法律上の婚姻関係ではない男女の間に生まれた子供(非嫡出子)の出生届は、母親が届出ることが定められており、この場合に子は母親の戸籍に入ります。

非嫡出子を父親が認知することで、相続権が発生します(民法779条)。

なお認知の手続きをとった場合は、子の戸籍の父母欄に父の氏名が記載されますが、戸籍の異動はありません。

また父親は子がまだ胎児の場合も、母親の承諾を得られれば認知は可能です。

また遺言によって認知をすることも可能です。

死後認知すれば相続権が発生する

内縁の夫が突然亡くなった場合や、さまざまな事情により認知せずに亡くなる場合も考えられます。

この場合、父または母の死亡から3年以内であれば、子や、さらにその子供(直系卑属)など、またその代理人は認知の訴えを提起できます。

この訴えが認められれば、親の死亡後であっても、子は認知されます。

死後認知が認められると子には相続権が発生しますので、遺産を相続することができます。

養子縁組をしていれば相続権がある

内縁のパートナーに連れ子がいる場合も、養子縁組をすることで法律上の親子関係となるため養親の財産を相続することが可能です。

内縁関係のパートナーとの子どもの相続割合

以前は内縁関係のパートナーとの子どもである非嫡出子の相続分は嫡出子の半分でしたが、民法の一部が改正され2013年の9月5日以後の相続については非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分と同等になりました。

内縁関係のパートナーが相続する方法

前述のとおり、内縁関係のパートナーは法定相続人になることができません。

ではどのように財産を受け取ることができるか確認します。

遺言書による遺贈

内縁のパートナーに遺産を残すためには、遺言書を作成して遺贈することができます。

遺言書により被相続人(亡くなった方)の意思が尊重され、パートナーは財産を受け取ることができます。

  →→遺言についての解説はこちら

  →→遺贈についての解説はこちら

遺贈を行う場合には注意点があります。

被相続人の子供など、兄弟姉妹以外の法定相続人には残されるべき遺産の割合(遺留分)が法律で定められています。

遺言書によってこの遺留分が侵害された場合、相続人から遺留分侵害請求を行使され、争いとなる恐れがあります。

遺贈する際は遺留分を侵害していないかどうか、確認をすることが重要です。

   →→遺留分の解説についてはこちら

生命保険の受取人にする

生命保険の受取人を内縁のパートナーとして、保険金として財産を贈る方法もあります。

しかし法律上の親族ではない内縁のパートナーは、たいてい死亡保険金の受取人になることができません。

死亡保険金の受取人は原則として、被保険者の戸籍上の配偶者または二親等以内の血族などに限られているため、内縁のパートナーでは受け取れません。

ただし近年では、親族以外でも受取人になれるよう受取人の範囲も拡大して取り扱われており、一定の条件を満たすことで内縁のパートナーを受取人に指定できます。

死亡保険金を受け取った場合、保険金は受取人固有の財産なので、相続人と分け合う必要はありません。

しかし、死亡保険金はみなし相続財産として扱われ、内縁のパートナーが受け取った保険金には、死亡保険金の非課税限度額は適用されないため、受け取った保険金全額が相続税の課税対象になります。

また、相続税の2割加算の対象になります。

   →→死亡保険金の解説についてはこちら

特別縁故者として財産分与を受ける

相続人がいない場合、特別の縁故のあった人(特別縁故者)が家庭裁判所に請求することで、相続財産の一部、または全部を受け取れる場合もあります。

特別縁故者として申立てができるのは、以下のいずれかにあてはまる人です。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

特別縁故者が財産を取得するためには、所定の期間内(相続人不在が確定後3ヵ月以内)に家庭裁判所に申立てをして認められる必要があります。

生前贈与を行う

生前贈与とは、生きているうちに財産を譲ることです。

生前贈与であれば、贈与する相手を自由に選ぶことができるので、内縁のパートナーに財産を譲ることができます。

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2つの方法があります。

暦年課税を選択した場合、贈与を受けた財産は贈与税が課されますが、1年間の贈与額が基礎控除額である110万円以下なら贈与税はかかりません。

また婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産またはそれを取得するための金銭の贈与では、基礎控除額の110万円のほかに、2,000万円まで非課税となるのが贈与税の配偶者控除という特例です。

大きなメリットのある制度なのですが、上記のとおり婚姻期間が20年以上の夫婦であることが条件になっており、法律上の婚姻関係ではない内縁の夫婦間には適用されません。

課税価額が同じ場合、相続税よりも税率が高く設定されている贈与税は、不利というイメージがありますが、例えば暦年贈与の基礎控除額を越えない額を生前贈与し、財産を減らしておくことで結果的に節税になるというケースもあります。

一方で相続開始の前1年以内の生前贈与や、当事者双方が遺留分を侵害することを知ったうえでの贈与は、法定相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

遺産分割で揉めることがないよう、法定相続人の最低限の遺産の相続分=遺留分を考慮に入れて内縁のパートナーに贈与するように注意しましょう。

  →→生前贈与の解説についてはこちら

内縁関係のパートナーの相続の注意点

内縁関係だとしても遺産を受け取った場合は相続税を納めなければなりません。

しかも法律上の配偶者とは違い、相続税の優遇措置を受けることができず、非課税枠などの特例が受けられない点に注意する必要があります。

 〈内縁関係での相続税

  • 基礎控除額の計算での法定相続人に含まれない
  • 配偶者控除が使えない
  • 障害者控除が受けられない
  • 小規模宅地等の特例が使えない

まとめ

今回は内縁関係のパートナーに遺産を残す方法を解説しました。

実態は夫婦であっても、婚姻届けを出している・出していないで大きな違いがあります。

パートナーに遺産を残すためには、いろいろな方法がありますが、他に法定相続人がいる場合はトラブルとなる可能性もあります。

気になる点や疑問点があれば、法律専門家へ相談することが重要です。

豊富な知識や経験から、状況にあった的確なアドバイスを得ることができます。

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行政書士倉橋尚人事務所

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