おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
昨今ではスマホやパソコンの普及により、故人が持っていたデジタル機器に残された遺品を「デジタル遺産」といいます。
デジタル遺産には、ネット口座や金融資産、思い出の写真やプライベート情報など様々なデジタルデータが残されています。
デジタル遺産を死後に整理ができていないと、相続のトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
今回はデジタル遺産について、トラブルとならないための生前整理について解説します。
デジタル遺産のトラブルとは
昨今では多くの人がスマートフォンやパソコンを使って写真や動画を保存し、SNSアカウントを持っています。
これらのデータは特別な思い出や重要な情報を含んでいることが多く、大きな価値を秘めています。
またネット口座やFX・株式、暗号資産など金融資産の情報もデジタル遺産として残されています。
このようなデジタル遺産は、適切な管理がなければ失われる可能性があり、デジタル遺産の取り扱いには十分な注意が必要になります。
なかでも「パスワードロック機能」は本人しか知らないという人も多く、遺族が故人のパソコンやスマホ内にアクセスすることは困難になります。
特にパスワードを複数回間違えてしまうとデータが初期化されてしまうおそれのあるiPhoneなどのスマホについては絶望的な状況に陥り得ます。
デジタルデータを保存するための方法や、遺族がそのデータをどのように処理するかなど、考慮すべき点は多岐にわたります。
デジタル遺産のトラブル事例
故人のパソコンやスマホのログインパスワードがわからず、これらのデジタル機器内にアクセスできない場合には、下記のようなトラブルが発生する可能性が高くなります。
遺影の写真がない
葬儀を執り行う際、故人の遺影を飾るのが一般的です。
パソコンやスマホ内にアクセスできない場合、この「遺影」となる写真をデジタル機器から取り出すことができず、映りの良くない写真や古い写真を「遺影」にせざるを得ないというトラブルが起こる場合があります。
昔であれば、カメラで撮影した写真は現像して紙焼きするケースが多かったかと思いますが、最近ではほとんどの方がスマホなどで写真を撮影され、プリントアウトまでする人は少数かと思います。
特にスマホ内に入れない場合には、スマホ内の写真データにアクセスできず、遺族は「遺影」となる写真データへアクセスすることができません。
実際、故人のスマホなどを開くことができず、故人の近影を取り出すことができなかった事例も多数あります。
古い写真を遺影として使わざるを得ないこととなり、事情を知らない親族から「こんな古い写真を遺影にするなんて、故人がかわいそうだ」などと嫌みを言われて傷ついた、というケースが増えてきているようです。
故人の友人や知人に葬儀の連絡ができない
葬儀の際には、故人の友人や知人に急いで連絡を取り、通夜や告別式に参列してもらうことになります。
故人の友人や知人の連絡先はすべて故人のスマホの中に入っているケースが多く、スマホの中に入れないと連絡先がわからず、声をかけられないというトラブルが起こり得ます。
携帯電話のない時代は、各家庭に手書きの電話帳があり、すぐに電話番号がわかるようになっていましたが、これだけ携帯電話やスマホが普及した中で、手書きの電話帳が残っている家庭は皆無です。
実際、故人のスマホのパスワードがわからず、友人や知人を呼ぶことが難しかったという事例も多数あるようです。
スマホのデータがすべて消えてしまう
パソコンやスマホ内に入れず、遺族は必要な情報にアクセスでないことで大きなストレスとなります。
何とかしてスマホ内に入ろうと、ログインパスワードを何回も入力してしまうケースこともありますが、特に故人がiPhoneを使用されている場合には注意が必要になります。
iPhoneには、パスワードを複数回(10回)間違えると、スマホ内のデータを初期化する機能、つまりデータをすべて削除する機能が備わっており、故人がこの機能を利用している可能性があります。
実際、故人が亡くなったことで慌ててパスワードを何度も入力し、スマホ内のデータがすべて消えてしまったというトラブルはよく聞こえてきます。
携帯電話の会社(各キャリア)はパスワード解除の対応はできませんが、スマホのログインパスワードを解除してくれる専門事業者も存在します。
パスワード解除に20~30万円程度の費用が必要とされるだけでなく、解除するのに半年以上かかるケースもあり、実際にはパスワード解除を断念される人も多くいます。
パスワードを複数回間違えてしまい、データが初期化してしまったら、専門事業者でもデータを復旧することは難しいようですので、注意が必要です。
トラブルとならないデジタル遺産の生前整理
前述のトラブルの多くは、故人のパソコンやスマホ内にアクセスすることができないことが原因で生ずるものが多く、故人のパソコンやスマホ内に入れてしまえば、ほとんどの問題を回避することが可能です。
そのため、万が一の際、遺族が困ることのないよう、生前から自身のパソコンやスマホなどのログインパスワードを共有しておくことがおすすめです。
パスワードの共有方法にはエンディングノートを活用
生前からパスワードを共有してもよいという人は、パートナーや家族に対して、自身のデジタル機器に関するログインパスワードをしっかりと伝えておきましょう。
「生きているうちにログインパスワードを共有することはちょっと……」という場合は、万が一の際、家族などに自身のパソコンやスマホなどのデジタル機器のログインパスワードを共有できるような「仕組み」を整えておくとよいでしょう。
たとえば、エンディングノートを活用する方法があります。
エンディングノートにログインパスワードも記入したうえで封筒に入れて封印し、家族などに対して「万が一のときは、封筒を開封してエンディングノートを見てほしい」と伝えておく形が考えられます。
また、名刺サイズの紙にパソコンやスマホのログインパスワードを記入し、自身の財布や通帳に挟んでおく方法も考えられます。万が一の際は、家族が財布や通帳を確認する可能性が高く、エンディングノートのように明確にその存在を伝えなくても、見つけられやすいと言えます。
まとめ
今回はデジタル遺産の生前整理について解説しました。
故人が遺したデジタル遺産には金融資産や思い出のデータなど、トラブルのもとになる情報が多く含まれています。
相続税などの問題もあるので、生前に備えられる場合はログイン情報など共有しておくことが重要です。
気になる点や不明な点があれば法律専門家へ相談することが解決の近道になります。
豊富な知識や経験から、状況にあった的確なアドバイスを得ることができます。
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