公正証書遺言が無効になる!?公正証書遺言が無効となるケースや対処法を解説

相続

おはようございます。

東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。

正しく作成された公正証書遺言は、遺言者の意思を反映させた確実な効果が期待できます。

しかしながらケースによっては公正証書遺言であっても、無効となってしまうこともあります。

有効となる公正証書遺言を作成するためにも、どのようなケースで無効となるのか、注意すべき点などをふまえ対処方法について解説していきます。

少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。

  →→公正証書遺言の解説についてはこちら

公正証書遺言の効力

遺言を残す人の意思を実現できる

正しく作成された公正証書遺言があれば、遺言者の意思を実現することができます。

具体的には、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈、寄付、認知、保険金受取人の変更、特別受益の持ち戻し免除、推定相続人の廃除、遺言執行者の指定、祭祀承継者の指定などです。

ただし、相続人以外に遺贈を受ける者(受遺者)がいない場合、相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることも可能です。

これらの効力は自筆証書遺言と変わることはありません。

無効になるリスクが少ない

公正証書遺言は、自分で作成する自筆証書遺言と違い、公証役場で作成します。

2人以上の証人の立ち会いのもと、公証人という法律の専門家が本人の意向を確認しながら作成してくれるため、書き方の間違いで無効となることはありません。

また遺言書を公証役場で預かってもらえるため紛失する恐れもありません。

公正証書遺言の効力が保たれる期間

公正証書遺言の有効期限はありません。

ただし公証役場での保管には期限があります。

通常、公正証書の保存期間は20年ですが、例外的に公正証書遺言は原則として遺言者が120歳になるまで保存されているようです。

近年では遺言者に長寿化の傾向もあり、20年経過後に遺言者から公正証書遺言の正本等の再発行を求められた場合に対応できるようにしています。

公正証書遺言の効力と、遺留分の関係

信頼性の高い公正証書遺言であっても、一定の相続人が最低限の遺産を受け取れる権利である「遺留分」を侵害する内容であった場合、遺留分の支払いを請求される可能性があります。

遺留分は法律によって保障された権利であり、公正証書遺言によっても奪うことはできないためです。

なお遺留分の請求があったとしても遺言自体が無効になるわけではありません。

遺言に沿って財産を取得したうえで、財産を取得した人が遺留分に相当する金銭を支払う形になります。

  →→遺留分の解説についてはこちら

公正証書遺言が無効になるケース

自筆証書遺言と比べ、無効になるリスクが少ない公正証書遺言ではありますが、絶対に無効にならないわけではありません。

認知症など遺言能力がなかった

遺言者が有効な遺言をするためには、遺言能力が必要となります。

遺言能力とは、遺言内容やその影響の範囲を理解できる能力を指します。

この遺言能力がない状態で作成された遺言は無効となります。

「認知症の状態で、公正証書遺言をつくれるのか?」と疑問に思う方もいますが、公証人が遺言者に認知症かどうかの確認を常にするわけではありません。

実際、一部の相続人が遺言者は認知症であったなどと主張して、遺言能力が争われることは少なくありません。

この場合、病院のカルテや介護事業者のサービス提供記録などのさまざまな資料を参考に当時の遺言能力を判断することになります。

証人が不適格であった

公正証書遺言を作成する際には、証人2人以上の立会いが必要です。

この証人には、未成年者、推定相続人、遺贈を受ける者、推定相続人及び遺贈を受ける者の配偶者及び直系血族等がなることはできません。

そのため、これらの者を証人として作成された遺言は無効となります。

口授を欠いていた

公正証書遺言を作成する際、遺言者は、遺言の趣旨を公証人に口授しなければなりません。

「口授」とは、口頭で述べるということです。

原則として動作によって伝えることは許されないため、病気などの理由で発話が困難になった遺言者の遺言を巡り、口授の有無が問題になることがあります。

たとえば、遺言者が公証人の読み聞かせに単にうなずいたに過ぎない場合は口授があるといえず、遺言は無効となる可能性が高くなります。

なお口がきけない人は、公証人の面前でその趣旨を自書(筆談)するか、通訳人の通訳を通じて申述する形で公証人に意思を伝えることで「口授」に代えることが可能です。

詐欺、強迫、錯誤があった

詐欺、強迫、錯誤による遺言は、民法の一般原則に従い、取り消すことが可能です。

ただし遺言者が生存中は、遺言を撤回したり新たに遺言を作成したりすることで対応できます。

そのため、これらが問題となるのは遺言者の死後ですが、詐欺や強迫などをされた遺言者本人が亡くなっている以上、相続人などの第三者がこれらの事実を立証することは通常困難です。

遺言能力が争われる場合などに予備的に主張することはあるものの、これらを主たる主張として争われることはケースとしては少数です。

公序良俗違反

配偶者がいながら他の交際相手に全財産を遺贈する遺言などが典型的なケースで、公序良俗違反として遺言が無効になり得ます。

公正証書遺言が有効となる要件

公正証書遺言の基本的な要件は以下のとおりとなります。

有効性の有無の争いを避けるためにも、要件を確認しておきましょう。

  • 遺言能力がある
  • 遺言者の年齢が15歳以上
  • 証人2人以上の立会い
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
  • 公証人による口授の筆記と公証人から遺言者・証人に対する筆記した内容の読み聞かせ・閲覧
  • 遺言者・証人が筆記の正確なことを承認し、各自署名・押印する
  • 公証人が前各号に掲げる方式に従って作ったものであることを付記し、署名押印すること

公正証書遺言の効力が争われた際の対処方法

訴訟の前に、まずは交渉

訴訟になると時間も費用もかかりますので、交渉で決着するに越したことはありません。

負担を軽減するため、まず訴訟で争うのではなく、交渉から開始するのが一般的な流れです。

法定の形式に違反している方式や違背など誰にでもわかる形式的な不備がある場合には、交渉で決着することも期待できます。

もっとも遺言が有効かどうかで、各人が取得できる財産に大きく差が生じる場合が多い点は注意が必要です。

たとえば全財産を特定の相続人に相続させる遺言などが代表例で、交渉で決着しない事例も多いのが実情です。

交渉で決着しなかったら遺言無効確認請求調停・訴訟

交渉で決着しなければ、遺言無効確認請求調停や訴訟を提起され、裁判所で決着をつけることになります。

事前に交渉をしていた場合には、調停ではなくいきなり訴訟を提起されることも多いです。

訴訟で遺言が無効という判決が確定した場合は、遺言がなかったものとして、相続人同士で遺産分割協議をすることになります。

遺言が有効という判決が確定した場合は、遺言に沿って財産を承継することになります。

  →→遺産分割協議の解説についてはこちら

まとめ

今回は公正証書遺言が無効になるケースと対処法について解説しました。

遺言書はご自身の意思で正確に作成するものです。 

また遺言作成においては、法律専門家のサポートを受けることが大切です。

ご相談に合わせて、「どのような遺言にするか」「いつまでに作成するか」などのサポートが可能です。

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行政書士倉橋尚人事務所

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