おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
親の自宅が「建物の所有者は親、土地は借地」ということを、相続が発生したタイミングで知るケースが往々にしてあります。
土地を借り、建物を建てて使用する権利を借地権といいます。
今回は借地権を相続するときの手続きや注意すべき点などについて解説していきます。
この記事がお役に立てれば幸いです。
借地権とは
借地権とは、土地を借り建物を建てて使用する権利です。
自分の家を建築したいと考えた場合、土地を購入するという方法もありますが他人の土地を借りてその上に建築するという方法もあります。
その際に設定する権利が「借地権」です。
このように「借地権」とは建物所有目的で土地を借りる権利を意味します。
建物所有目的以外で土地を借りる場合には借地権といえず、あくまでも借りる権利に過ぎませんので、所有権とは異なります。
また借地とはいえ、正当な事由がない限り地主に土地の返却をする必要はなく(定期借地権等を除く)、借地人の権利は守られています。
借地権は相続の対象になるか!?
相続では、亡くなった人(被相続人)の一切の権利義務を相続人が相続するため、権利の一種である借地権も相続できます。
その中で地主にどこまで報告したり、許可を得たりすればいいのか迷う人も多々いらっしゃいます。
借地権の相続に地主の許可は不要
地主の承諾は必要なく、土地の賃貸借契約書の名義を変更する必要もありません。
地主に対して借地権を相続によって取得したことを通知すれば十分です。
譲渡承諾料(名義変更料)も不要です。
法定相続人以外の人への遺贈は、地主の許可が必要
被相続人が、法定相続人以外に遺言によって借地権を譲る場合は、地主の承諾と譲渡承諾料が必要です。
譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%程度が目安です。
ただ借地の事情は個々で大きく異なるので、この金額を目安にしつつ個別の事情を考慮して最終的に決定されます。
地主の承諾が得られなかった場合には、家庭裁判所に借地権譲渡の承諾に代わる許可を求める申立て(借地借家法19条1項)が可能です。
参考出典 e-Gov_借地借家法
相続した借地権の売却は、地主の許可があれば可能
相続した借地権は売却することも可能です。
ただし借地権の売却には、地主の承諾が必要になります。
地主の承諾を得ずに売却してしまうと、契約違反となり、地主に契約を解除されてしまうこともあります。
また地主の承諾を得て売却をする場合でも、通常、地主に承諾料(相場は借地権価格の10%程度)を支払うことが必要となります。
相続後の立て替えは、契約の条項をチェック
築年数が経っており、相続を機に建替えを検討する方もいるでしょう。
その際は当事者間の合意によって建て替えや増改築を制限する条項がある場合には、地主の許可を得ることが必要です。
許可を得られない場合には、裁判所に許可を求める申立てをすることが可能です(借地借家法17条2項・借地法8条の2第2項)。
許可を得ないまま建替えをしてしまうと、地主に契約を解除されてしまうこともあります。
通常は、地主に承諾料(相場は借地権価格の3~5%程度)を支払うことが必要となります。
借地権の相続手続き
借地上の建物の名義変更の流れ
借地権付きの不動産を相続する際には、不動産全部事項証明書を取得するなどして、対象となる不動産をまずは確認します。
地主にも相続が発生したことを連絡します。
相続人が複数いる場合には、誰が当該不動産の借地権を相続するのかを決めて遺産分割協議書を作成します。
なお遺言書で借地権の相続人が決まっているのであれば、借地権について遺産分割協議書を作成する必要はありません。
遺産分割協議書あるいは遺言書以外の必要書類も収集し、書類がすべて揃ったら、法務局へ名義変更の申請をします。
名義変更の必要書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人の住民票もしくは戸籍の附票
- 遺産分割協議書もしくは遺言書
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合)
- 固定資産税評価証明書
戸籍謄本や住民票、戸籍の附票は市区町村役場で、固定資産税評価証明書は市税事務所や市区町村役場で取得できます。
書類取得や手続きにかかる費用の目安
【書類取得にかかる費用の目安】
戸籍謄本・・・1通450円
除籍謄本・改製原戸籍・・・1通750円
住民票・戸籍の附票・・・1通300円
【手続きにかかる費用の目安】
建物所有権の名義変更に関する登録免許税・・・固定資産税評価額×0.4%
借地権の名義変更に関する登録免許税・・・固定資産税評価額×0.2%
借地権にも相続税がかかる
相続発生を知った日から10カ月以内に相続税申告をする必要があります。
借地権の相続も相続税の対象となり、普通借地権の相続税評価額は、その土地の路線価の3~9割で定められていますが、土地の評価額が高い地域ほどその割合も高くなる傾向にあります。
評価額が高額である場合、納税資金対策も必要となってきます。
トラブルを回避するための注意点
地主との関係性に注意
地主の許可を得ることが必要な場合も少なくありません。
また建物の建て替えのように地主の許可を得るにあたって、承諾料が必要な場合もあります。
そのため建物の現況を変える場合には、地主の許可を得ることが必要かどうか、また、承諾料の相場を事前に調べた上で行動に移すことが地主とのトラブルを避けるために重要です。
相続をきっかけに、地代の値上げを要求されるケースもありえます。
原則として法的に応じる必要はありませんが、少額であれば応じてしまった方が、後々トラブルにならずに済むと判断されることもあります。
なお相続を理由に名義変更の承諾料や立ち退きを要求されても、法的に応じる必要はありません。
借地権の共有は避ける
借地権や不動産の相続では、相続人間での共有はなるべく避けましょう。
借地権の売却などに全員の合意が必要となるなど、後にトラブルが起こる恐れがあります。
また次の代に相続されると共有者がさらに増え、権利関係が複雑になるので、合意形成が難しくなります。
まとめ
今回は借地権の相続について解説しました。
地主との関係性の問題もあり、相続する際には注意すべきポイントが多々あります。
また名義変更の手続きは書類集めなど複雑なことも多いです。
少しでも気になる点や不明な点があれば法律専門家へ相談することが重要です。
豊富な知識から状況にあった的確なアドバイスを得ることができます。
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