おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
お墓の名義人(使用権を取得している人)が亡くなると、残されたお墓は祭祀財産となり、相続する「祭祀承継者」を決定しなくてはなりません。
従来の家制度のもとでは「配偶者や子供がお墓を継ぐ」という考え方が一般的でした。
しかし、少子化や核家族化が進んだ現在は、遠距離で管理がしにくい、子供がいないなどが理由で、一筋縄ではいかないケースも増えてきています。
今回はお墓の相続(承継)における手続きや注意すべき点を解説します。
少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。
お墓の相続とは 概要
お墓は、預貯金や不動産などと異なり相続財産ではなく、祭祀財産となります。
祭祀財産とは先祖をまつるためのもので、ほかに日常的に礼拝している仏壇や神棚、位牌、家系図などが該当します。
お墓だけでなく、お墓の敷地や墓地使用権なども基本的には祭祀財産となります。
ただし、古美術的な価値があるなどで投資の対象となるものや商品として所有しているものは祭祀財産として扱われません。
この祭祀財産は、相続税の対象とはなりません。
また相続放棄したとしても、祭祀財産であるお墓などの継承を放棄することはできません。
だれがお墓を相続(承継)するか
お墓などを承継する人を祭祀承継者(祭祀主催者)といいます。
祭祀承継者となる人の範囲は法律などで定められておらず、相続人でなくてもなることが可能です。
祭祀承継者は、あらかじめ口頭や遺言で指定されていることが多いケースとなります。
亡くなられた方が誰も指定していなかった場合は、親族間での話し合いで決めるか、家庭裁判所に申し立てをして決めてもらうことになります。
祭祀承継者になると、お墓を管理したり、お寺に対して管理費やお布施を払ったりすることになります。
基本的に一度祭祀承継者になると、亡くなるまで同じ人が祭祀承継者となりますが、生前に祭祀承継者の変更を行うことは可能です。
変更する方法は、当事者間の合意による方法と、家庭裁判所に祭祀承継者の指定を申し立てる方法があります。
<祭祀承継者の役割>
- お墓や仏壇などの維持管理
- お墓や仏壇の所有権を持つ
- 法要の執り行い
お墓を相続(承継)する流れ
- 祭祀承継者を決める
- お寺へ連絡をする
- 名義書換をする
- 手数料を支払う
祭祀承継者を決める
一般的に、亡くなった方の長男が祭祀承継者となる場合が多いですが、祭祀承継者となる人について法律上で定められているわけではありません。
祭祀承継者は、相続人でなくてもなることができます。
祭祀承継者の指定は、遺言書に明記されている場合や、口頭で伝えられているケースが大半で、遠縁の親族や内縁のパートナーなども指定することが可能です。
しかしながら墓地・霊園によっては、墓地使用権の承継者に条件を付けていることもあるので、祭祀承継者の決定にあたっては、墓地・霊園の使用規則を確かめましょう。
また祭祀承継者としての役割を果たすことができるかどうかも確認しておく必要もあります。
一方、誰も祭祀承継者になりたくないなどで、祭祀承継者が決まらないときには、家庭裁判所に祭祀承継者指定の調停又は審判を申し立てることになります。
調停によって祭祀承継者を決められる可能性がありますが、もし調停が不成立になった場合には家庭裁判所が審判により祭祀承継者を指定します。
お寺へ連絡する
祭祀承継者が決まったら、承継するお墓のある墓地・霊園の管理者や寺院に連絡します。
名義を変更する
手続きに必要な書類は霊園や寺院によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
<一般的な名義変更に必要な書類>
- 名義変更申請書
- 墓地使用許可証、永代使用承諾証など
- 承継の理由がわかる書類(亡くなられたことが記載された戸籍謄本など)
- 承継者の戸籍謄本、住民票
- 承継者の印鑑証明書
手数料を支払う
手数料は霊園や寺院によって異なります。
公営霊園
手数料 数百円~数千円程度
民営霊園
手数料 数千円~1万円以上
寺院
寺院の墓地の場合は檀家の立場も引き継ぐことになります。
手数料に加えてお布施が必要なことも多々あります。
お墓の相続(承継)の注意点
お墓などの祭祀財産は相続財産ではないため、相続放棄したとしても継承を放棄することはできません。
費用がかかる
お墓を承継すると、維持管理に費用が発生します。
祭祀承継者はお墓の維持管理費を負担するだけでなく、法要時に寺院へ支払うお布施や、法要での食事代などの費用がかかります。
また、寺院の墓地を承継した場合、その寺院の檀家になることが原則です。
お墓そのものの管理費だけでなく、檀家として、寺院の改築などの費用も負担しなければならないこともあります。
手間がかかる
普段から墓地の清掃や手入れをするとともに、お盆や正月、命日などには墓参に行きます。
また地震などの災害でお墓が被害を受けたときには、修理や改葬の対応が必要になります。
お墓が遠方にある場合、定期的な訪問にかかる交通費や時間もかかります。
祭祀承継者は一般的に1人のことが多いですが、複数でも構わないとされているため負担を少なくするために複数人で承継することも選択肢の一つです。
お墓を近くに移動する改葬という選択肢もあります。
お墓の相続(承継)で起こりやすいトラブル
お墓の承継者が複数名いることによるトラブル
1人で祭祀承継者となることが負担であるため、複数名で祭祀承継者となるケースがあります。
一般的には祭祀承継者は1人であることが望ましいと言われています。
祭祀承継者は、墓地の移転や祭祀財産の処分などの意思決定を行えるため、複数人いる場合、承継者の1人が勝手に祭祀財産を処分してしまったなどのトラブルが起こる恐れがあります。
誰も承継者になりたくない
相続人が遠隔地にいたり、お墓の費用が払えないなどの理由で、相続人の中から祭祀承継者が見つからないケースもよくあります。
祭祀承継者には、相続人以外でもなることができるため遠縁の親族や内縁のパートナーなど、亡くなられた方と親しい人に依頼することも検討します。
まとめ
お墓は相続財産ではありません。
そのためほかの相続財産と扱いが異なります。
昨今の少子化やライフスタイルの変化などにより、お墓の承継が難しくなるケースも多々あり、親族間でよく話し合いどのようにすべきか決めることが重要です。
疑問点や気になることがあれば法律専門家へ相談することもおすすめです。
専門的な知識で的確なアドバイスを得ることが可能です。
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