おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
民事において様々な契約を結ぶ際により効力を強く持たせるために活用される公正証書。
遺言や離婚協議書など様々な場面で利用されることがありますが、実際はなぜ作成するのか、作成方法などはわからないものです。
今回は公正証書について、作成するメリットや作成するための手順を解説していきます。
少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。
公正証書とは
公証事務を担う公務員の公証人が権限にもとづいて作成して内容を証明する公文書です。
個人または法人からの依頼に基づき、特定の事実や契約の成立を確認してその内容を証明する役割を果たすものです。
また公正証書には高い法的効力があるため、裁判所や行政機関でも証拠として使う可能です。
特に遺産相続においてはトラブルとなるケースが多いため、公正証書が広く活用されています。
公正証書の種類
公正証書は主に3つに分類されます。
契約に関する公正証書
一般的に契約というと紙の契約書を使って当事者間で署名捺印して保管することが多く見受けられます。
その中で契約の金額が大きい時や法人にとって重要な契約である場合には、より正確に契約があったことやその内容を保証することが求められ公正証書を作成することが求められます。
【主な契約に関する公正証書】
- 売買契約
- 任意後見契約
- 金銭消費貸借契約
- 土地建物賃貸借契約
- 離婚協議書
- 単独行為に関する公正証書
- 当事者一人の意思表示によって成立する法律行為を「単独行為」といいます。
単独行為に関する公正証書
代表的なものとして遺言において公正証書遺言があり、遺言者の意思として遺言を伝えるのであれば確実な公正証書遺言が選ばれます。
その他、時効の援用や債務免除等などが単独行為に関する公正証書となります。
【主な単独行為に関する公正証書】
- 公正証書遺言
- 保証意思宣明公正証書
事実実験に関する公正証書
事実実験とは、個人の権利や義務に関する事実について公証人が自ら調査(事実実験)した事実に基づいて作成した公正証書をいいます。
証拠保全を主な目的として、権利に関係のある多種多様な事実が対象となります。
たとえば相続において、土地の様子を現地で確認したり、銀行の貸金庫の中を確認したりしたことを公正証書にします。
その他、特許権の侵害行為を記録として保存して紛争の証拠として残したりします。
公正証書を作成するメリット
公正証書を作成するメリットについて以下に解説します。
高い法的効力がある
公正証書は公証人が適切な方法で作成した文書です。
そのため極めて高い法的効力を有しています。
また公証人が作った文書は「公文書」に分類され、真正に成立した文書として推定されます。
公正証書はその文書の作成名義人の意思によって間違いなく作成された文書であると言えます。(民事訴訟法228条2項)
文書の真正性があるため民事におけるさまざまなトラブルのリスクを回避することができます。
高い執行力がある
お金を返してもらう、養育費を支払ってもらうといった契約が守られないときに強制的に債務を履行することが必要となります。
この強制執行を行うためには、「債務名義」(訴訟の判決や調停調書、公正証書など)と呼ばれる書面が必要です。
(公正証書に債務名義としての効力を持たせるには「強制執行認諾文言」を盛り込み相手の同意を得る必要があります)
つまり公正証書があれば、訴訟や調停などを行わなくても強制執行を行うことが可能となります。
高い安全性がある
公正証書は、公証役場で原本を20年間保管します。
万が一(契約書の破損・紛失・盗難など)の際でも再発行をしてもらうことが可能です。
公正証書を作成する手順
実際に公正証書を作成するためにはどのような手順が必要となるか解説します。
1.公正証書の内容を作成する
公証人は原則契約内容には触れません。
公正証書にしたい契約の内容は自分で纏めておかなければなりません。
内容が分かればメモ書き程度でも問題ありません。
遺言においては、財産の内訳や相続させる人を確認して準備しておきます。
2.公証役場に予約を入れる
公証役場は事前予約が必要となります。
日本公証人連合会のホームページで公証役場の住所と電話番号を確認して連絡を入れます。
公証役場の面談は本人ではなく代理人が代わりに出席することもできます。
法律専門家などへ代理を依頼することもできます。
3.公証役場にて手続きをする
予約した日時にて公証役場へ出向き手続きを行います。
【主な手続き】
- 公証人による面談(内容の確認)
- 草案をもとにした公正証書の作成
- 公証人による内容の読み上げまたは閲覧
- 公証人と当事者・証人の署名
- 公正証書の原本の作成
身分証明証や印鑑(場合により実印)が必要となるため、持っていくべきものはよく確認しておきましょう。
4.支払い・書面の受け取り
公正証書を作成したら、手数料を支払い書面を受け取ります。
作成した公正証書の原本は公証役場に20年間保管され、必要に応じて再発行が可能です。
契約の当事者に交付されるのは謄本となります。
公正証書にかかる費用
公正証書の作成費用(公証人手数料)は、「公証人手数料令」という政令によって定められています。
そのため全国のどの公証役場に依頼しても費用は同じになります。
公証人手数料の金額・算定方法は、原則として公正証書の目的価額(公正証書記載の法律行為によって得られる一方の利益)によって異なります。
目的価格 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1憶万円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 43,000円に超過額5,000万円までごと
に13,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 95,000円に超過額5,000万円までごと
に11,000円を加算した額
10億円を超える場合 249,000円に超過額5,000万円までごと
に8,000円を加算した額
まとめ
今回は公正証書について解説をしました。
公証役場にて公証人は公正証書の作成をサポートしてくれますが、あくまで中立の立場で契約書の不備を防ぐことが目的です。
不利な内容の契約であったとしても助言をしてくれるわけではありません。
自身で気づかずに不利益を被る可能性もあるため、手順の最初の段階「公正証書の内容を作成する」から法律専門家へ相談することが重要です。
↓↓↓個別にご相談されたい方はこちら
コメント