おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
死亡後に財産を承継する制度として相続のほかに、『遺贈』と『死因贈与』があります。
どちらも死亡を起因にする点は同様です。
亡くなった後に大切な財産を「だれに」「どのくらい」引き継いでもらうか、、、
今回は死因贈与について解説していきたいと思います。
大切な財産を「だれに」「どのようにして」「どのくらい」引き継ぐかを検討する材料としてご活用ください。
- 贈与とは
- 死因贈与とは
- 死因贈与と遺贈の違い
- 死因贈与のメリット
- 死因贈与で注意すべきポイント
- まとめ
【贈与とは】
贈与とは、「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思表示を示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる(民法549条)」と条文にあります。
A「やるよ」→B「もらうよ」と、渡す側と受け取る側の合意によってなされる契約(諾成契約)となります。
【死因贈与とは】
贈与者が死亡したときに効力が生じる贈与を死因贈与といいます。(民法554条)
生きているうちに財産を渡す贈与を生前贈与といいます。
【死因贈与と遺贈の違い】
先述のとおり、死亡が起因となり財産を渡す法律行為として遺贈があります。
「死因贈与」と「遺贈」の違いは、その契約行為の有無になります。
遺贈は遺言書によって法定相続人以外に財産を一部あるいは全て譲る行為です。
いわば一方的な意思表示となります。
死因贈与は、財産を渡す側・受け取る側の双方の合意があってなされます。
【死因贈与のメリット】
▼法定相続人以外を対象に財産を渡せる
死因贈与は言葉のとおり、贈与になります。
法定相続人以外で生前にお世話になった人などに財産を渡したいと考えておられる場合は活用しましょう。
▼財産を放棄されることがない
財産を渡す人(贈与者)と財産を受け取る人(受贈者)が契約をすることなるため、財産を放棄することはできません。
財産を確実に渡したい人へ渡すことができます。
▼負担付死因贈与とすることで受贈者の権利が守られる
単純に死因贈与であれば、財産を渡す人(贈与者)は基本的にいつでも贈与の撤回をすることができます。
財産を受け取る人(受贈者)にとっては、死因贈与がなされるかわからない状態となります。
このような状態に対し、負担をつける『負担付死因贈与』をすることが可能です。
財産を受け取る人が、財産をもらう代わりに何かしらを負担する契約です。
例えば「贈与者の介護をすることを条件として、財産を譲る」という契約になります。
負担付死因贈与では、負担の履行がなされている場合、贈与者は一方的に契約を撤回することができません。
「介護をしてもらっているにもかかわらず、一方的に死因贈与を撤回できません」
負担の履行によって受贈者の権利を守ることができます。
【死因贈与で注意すべきポイント】
▼契約は書面にて行う
死因贈与は贈与者と受贈者の口頭での契約でも成立します。
しかしながら後のトラブルを防ぐ観点から、必ず『死因贈与契約書』を作成して保管しておきましょう。
公正証書であれば、贈与対象となる不動産の仮登記・本登記の手続きにおいて書類をそろえやすくなり、以後の手続きがスムーズです。
▼不動産は仮登記で権利を保全する
不動産は登記することで他の誰に対抗しうることができます。
死因贈与では贈与者と受贈者との合意で契約がなされるため、仮登記(始期付所有権仮移転登記)を行うことが可能です。
この始期付所有権仮移転登記は、贈与者が死亡した時に受贈者へ移る旨の登記となります。
遺贈では贈与者の一方的な意思表示のため、この仮登記をすることはできません。
受贈者の権利を保全して、確実に不動産を渡すため仮登記を行いましょう。
▼死因贈与契約の中で執行者を指定する
死因贈与契約の中で執行者を指定しておき、契約が発行した時(死亡した時)の不動産本登記を法定相続人の協力を得ずにスムーズに行うことができます。
▼遺留分に気を付ける
死因贈与は遺留分侵害請求の対象となります。
死因贈与によって相続人の遺留分を侵害していた場合、遺留分に満たない分の請求を受贈者が受けることになります。(遺留分侵害請求)
▼死因贈与は贈与税ではなく相続税の課税対象
死因贈与は相続税の課税対象となるため、受贈後10か月以内の相続税申告をする必要があります。
また受贈者が配偶者もしくは1親等以内の血族でない場合、2割加算となります。
▼不動産取得税の課税対象
不動産を受贈した場合、不動産取得税が課税されます。
税金の軽減制度はあるものの、相続・遺贈での不動産取得は非課税となります。
不動産取得税は原則4%です。
▼登録免許税にも注意
不動産取得税とあわせて、不動産登記をするときに登録免許税にも注意が必要となります。
≪登録免許税の税率≫
相続:固定資産税評価額 × 0.4%
贈与:固定資産税評価額 × 2.0%
不動産の評価額次第では大きな負担となる可能性があります。
【まとめ】
こまで死因贈与について解説してきました。
負担付死因贈与や始期付所有権仮移転登記を行うことができる生前対策となります。
今回の死因贈与を含め、相続にすべきか遺贈にすべきか、または贈与とすべきか個々人の財産や状況によって様々です。
法律専門家に相談すれば個々人にあった的確なアドバイスをもらうことができるでしょう。
解らない点や少しの不安でもあれば専門家へ相談することが重要です。
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