おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
相続は死亡がきっかけで発生する財産等権利義務の承継になります。
これに対し『生前贈与』というものがあります。
(ほか、死因贈与などもありますが改めて解説いたします)
この生前贈与を活用して、死後発生しうる相続問題を回避することも検討できます。
今回はこの生前贈与について解説していき、財産の承継についてどのようにすべきか、より良い財産承継となれば幸いです。
【贈与とは】
まずは贈与について解説いたします。
贈与とは、「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思表示を示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる(民法549条)」と条文にあります。
A「やるよ」→B「もらうよ」と、受け取る方の合意によってなされる契約(諾成契約)となります。
【生前贈与とは】
生前贈与とは、存命中に特定の人に贈与をすることです。
贈与ですので、法定相続人以外であっても財産を与えることが可能です。
お世話になった方へ渡すことも可能です。
また相続ではありませんので、相続税が課税されることはありません。
その反面、場合によっては贈与税が課税されます。
存命中に子や孫に早めに財産を譲って生活を援助したり、死後に相続となって遺産分割で揉める要因をなくすなど、ご自身の財産・ご家族・ライフステージに合わせて活用することが重要です。
【生前贈与のメリット】
▼贈与する相手・時期を選択できる
一般的に相続であれば、財産は死後に法定相続人に引き継がれます。
生前贈与であれば、財産を与える相手・与える時期を選ぶことができます。
法定相続人以外のお世話になった方(たとえば献身的に介護をしてくれた長男の奥さん)に財産を与えられます。
また財産を与える時期も、すぐにでも可能ですし、孫が大学に入る3年後でも可能です。
▼節税効果が期待できる
生前贈与によって、相続税の対象となる財産を減らし相続税を減らせることが期待できます。
反面、前述のとおり贈与税も考えなければなりませんが、非課税で贈与可能な控除額もあるため上手く活用すれば、税金がかからず贈与することも可能です。
(もちろん、相続であっても基礎控除額より下であれば相続税はかかりません)
▼相続時のトラブルを回避することが期待できる
相続においては、遺産分割におけるトラブルとなることが多々あります。
遺言があっても専門家のアドバイスなしに作成した場合、民法の書式でない場合は遺言無効となったり、遺言内容の解釈が異なったりとトラブルの要因となります。
相続の時にトラブルとなりそうな財産について、生前贈与をすることで事前に回避することも可能です。
また相続と違い、揉め事が起こった場合でも贈与した本人として揉め事を治めることも可能です。
【贈与税の節税効果が期待できる制度】
▼暦年贈与の非課税枠
年間(1月1日~12月31日)の基礎控除額110万円となり、年間110万円までの贈与であれば非課税となります。
注意点として、贈与を受ける人は合計110万円の基礎控除額となります。
他から贈与を受けており合計で110万円を超えた場合は、控除額を超えた金額は課税対象となります。
また2024年から税制改正により、相続税における生前贈与の加算対象の年数が7年になりました。(税制改正前は3年)
従前どおり、亡くなる3年前の生前贈与は相続税の加算対象となり、亡くなる4年前から7年前までの生前贈与は100万円を控除した額が相続税の対象として加算されます。
▼相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母(祖父母)が18歳以上の子(孫)に対して財産を贈与したときに利用できる制度となります。
贈与財産が2,500万円までの贈与は、贈与税の課税対象でなく相続税の課税対象となる。2,500万円を超えた額は一律20%の贈与税が加算されます。
相続発生時の評価額で課税となる相続税ではなく、相続時精算課税制度は将来値上がりするような不動産を贈与した時に節税効果が期待できます。
▼教育に関わる贈与
教育の資金を目的として父母(祖父母)からの贈与は、受遺者(子や孫)一人につき1,500万円まで贈与税が非課税となります。
この制度は受遺者が30歳になるまで適用されます。
▼結婚や子育てに関わる贈与
結婚や子育ての資金を目的として父母(祖父母)からの贈与は、受遺者(子や孫)一人につき1,000万円まで贈与税が非課税となります。
生前贈与をした日において、18歳以上50歳未満の受遺者が対象です。
▼住宅購入やリフォームに関わる贈与
住宅購入やリフォームの信金を目的として父母(祖父母)からの贈与は、受遺者(子や孫)一人につき一定金額が非課税対象となります。
この一定金額は住宅購入やリフォームの契約をした日・住宅の種類によって多少バラつきがあります。
2024年6月16日現在では以下のとおりです。
省エネ等住宅 1,000万円まで非課税
省エネ等住宅以外 500万円まで非課税
▼夫婦間での居住用不動産(居住用不動産を目的)の贈与
居住用不動産を贈与もしくは不動産購入を目的とした贈与は、結婚して20年以上経過している夫婦の場合2,000万円まで非課税となります。(内縁関係では非課税となりません)
条件として、贈与の翌年3月15日に贈与によって得た不動産に居住しており、今後も住み続けることになります。
生前贈与は、口頭の契約でもできるとされていますがトラブルを避けるためには間違いなく贈与契約書を作成することです。
また生前贈与にあたり、「遺留分を侵害しないようにすること」「贈与後の生活の資金について」など考える点は多々あります。
これら法律専門家に相談すれば、契約書の作成や個人の状況にあったアドバイスを得ることができます。
不安な点があれば、まずは法律専門家に相談することが重要です。
↓↓↓個人的にご相談されたい方はこちら
コメント