おはようございます。
東京都内で行政書士事務所を営む倉橋 尚人と申します。
「相続」ときいて、預貯金・土地・有価証券などのプラスとなる財産を思い浮かべる方は大勢いると思います。
しかしながら、債務・負債などマイナスの財産も相続財産となります。
この相続財産に対して、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のうちどれを選択するか決めなければなりません。
(なにもしなければ、単純承認をしたとみなされます)
このうち、相続放棄については前回解説させていただきました。
→→→相続放棄とは
今回は限定承認について、メリット・デメリットをふまえて選択すべきかどうか解説していきます。
【限定承認とは】
限定承認とは、相続によって引き継ぐプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ手続きとなります。
『プラス財産>マイナス財産』であれば、プラス財産でマイナス財産を弁済して残ったプラス財産を相続します。
『プラス財産<マイナス財産』であれば、プラス財産の範囲内でマイナス財産を弁済します。弁済できなかったマイナス財産が残っても相続人が責任を負うことはありません。
【限定承認を選択する場面】
ではどのような場面で限定承認を選択するか、以下のとおりとなります。
▼負債が多くあるが、特定の財産は相続したい
「借金を全部負担したくない、でも自宅は相続したい」というようなパターンです。引き継ごうと考えている形見(自宅など)の価格範囲で借金を負う形となります。
借金の負債額を抑え、残したいと思うものを相続できます。
▼相続した後で、借金などが出てくるか不安
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが大きいかわからないとき、後になって負債が見つかる恐れがあるときは限定承認をします。
あとになって借金があることが判明しても、相続したプラス財産を限度として弁済します。
以上のように限定承認をすれば、相続によって必要以上の負債を抱えるリスクを避けることが可能です。
しかしながら、限定承認をするためには複雑な手続きや期限があります。
次はその点を解説したいと思います。
【限定承認の手続き】
限定承認の手続きは家庭裁判所にて行います。
相続放棄と異なる点として、限定承認は相続人全員で家庭裁判所に申述します。
家庭裁判所は全国にありますが、被相続人(亡くなった方)が住んでいた場所の家庭裁判所になります。
〈必要書類〉
限定承認の申述書
被相続人の戸籍謄本
被相続人の住民票除票・戸籍附表
申述人全員の戸籍謄本
ほか、状況により必要な書類
相続放棄同様、限定承認をする場合は相続があったことを知ったときから3か月以内にしなければなりません。
申述が完了したら、裁判所から『限定承認受理通知書』が送られてきます。
その後は清算手続きとなります。
【限定承認の清算手続き】
清算手続きは相続人が一人の場合と複数の場合とで手続きが異なります。
一人の場合・・・清算手続きは相続人一人で行う
複数人の場合・・・家庭裁判所が相続財産管理人を選定
▼官報公告をする。
相続人が一人であれば5日以内に、複数人であれば、相続財産管理人が選ばれてから10日以内に「相続人が限定承認をしたこと」「債権者等は一定期間内に債務返済請求などをおこなわなければならないこと」を公告します。
公告をしたからといって、債権者が限定承認について知ることはありません。
債権者に対して、内容証明郵便を利用して通知します。
【限定承認のメリット・デメリット】
<メリット>
プラス財産の範囲以上のマイナス財産を引き継ぐ必要がない
ここまで述べたように、負債額が大きくても特定の遺産を引き継ぎたい場合(先買権)、プラス財産よりマイナス財産の方が大きい恐れがある場合、限定承認をすることにより必要以上のマイナス財産を引き継ぐ必要はありません。
<デメリット>
相続人全員で申述しなければならない
限定承認の手続きが終わる前に、相続人の一人が遺産に手を付けてしまうと単純承認したとみなされ、限定承認をすることができなくなります。
時間・手間がかかる
限定承認をするまでの3か月以内(熟慮期間)で、家庭裁判所へ提出する書類を準備して申述をします。
限定承認が受理された後も、相続人の中から相続財産管理人が選任され鑑定人の選任を依頼するなど時間をかけて多くの作業を進める必要があります。
清算後にプラス財産が残らなければ、時間と費用だけを使ったと感じるでしょう。
みなし譲渡所得税が発生する可能性がある
限定承認をした場合には被相続人から相続人に対して、相続発生時の価格で譲渡があったとみなす旨が定められています。
思わぬ税金がかかる可能性があります。
小規模宅地等の特例などが受けられない
限定承認をすると小規模宅地等の特例などの相続税軽減措置が受けられなくなります。
結果として、相続税が高くなる場合があります。
限定承認をすることによるメリットはあるものの、デメリットも多くあります。
手続きも煩雑で、法律専門家の手を借りる必要があります。
限定承認を考えている場合は、早めに法律専門家に相談することをおすすめいたします。
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